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<音> 音への好奇心が生み出した電子音の響き

樫尾俊雄発明記念館 vol.3

カシオ計算機を創業した樫尾四兄弟の一人で、多くの名作を生み出した発明家・樫尾俊雄。

その功績を今に伝える樫尾俊雄発明記念館に、今年入社2年目のデザイナーがベテランのデザイナーと訪問してきました。
日本の電子産業の発展に寄与してきた名作を前に、感じたこととは。

左:入社2年目デザイナー ユズさん ブランドデザインを担当中
右:ベテランデザイナー 井田さん 楽器・電卓・デジカメ・パッケージなどのデザインマネジャーを歴任

音階を奏でる電卓から生まれた「音の部屋」

東京・成城にある樫尾俊雄発明記念館。もとは樫尾俊雄の私邸であった建物で、現在は予約制で一般公開されており、こだわりを尽くした内装や調度品が訪問客を迎え入れてくれます。館内は、部屋ごとにテーマを分けて展示。「時の部屋」の隣にあるのが、「音の部屋」。おなじみの電子キーボードをはじめ、見た目にもユニークな電子楽器が所狭しと置かれています。

音への探究心が生んだ、カシオトーンの『子音・母音システム』とは

1980年発売の「すべての人に音楽を奏でる喜びを」という想いから生まれたCASIO電子楽器1号機Casiotone 201。スピーカー搭載の鍵盤演奏で、29種類もの楽器の音を奏でることに成功した。

ユズさん「この『子音・母音システム』って、はじめて耳にしました」

興味を示したのは、カシオ電子楽器の原点である『Casiotone201』。子音・母音システムとは音の立ち上がり部分を子音・母音それぞれに相当する波形を別々に発生させ、合成するというシステムのこと。これにより自然楽器の特徴ある音の変化を再現しました。

井田さん「独創的なシステムですよね。『カシオ』としゃべった音を録音して逆再生すると実は『オシカ』とは聞こえず『オイサック』と聞こえる。これはなんでだと突き詰めた結果、音を子音と母音に分けて合成するという手法に行き着いたようです」

ユズさん「すごい。そこを追求する純粋な好奇心に驚かされます」

井田さん「たしかに。やっぱりここがカシオの電子楽器の原点なんですよね」

ギターにサックス。電子楽器としての差別化を意識したデザイン

キーボード以外にも、デジタルギターやサックスのような形をしたデジタルホーンなど簡単に演奏を楽しめる電子管楽器が並んでいる。

井田さん「これはデザインしている様子を横から見ていたのですが、相当悩んだ末に生まれた製品なんです。ギターをもとにしたデジタル楽器でありつつ、アナログのギターとどう差別化を図るかに苦労したとか」

ユズさん「そうして完成したのが、この独特のフォルムなんですね。側面にボタン類が並んでいたり、直線で構成されていたりと、確かにアナログのギターにはないデザインです。私、ギターもやっているんですけど、このデジタルギターの感覚はまた独特ですね」

井田さん「弦がピンと張られていないのが一般的なギターとの大きな違いですね。プラスチック製なので、本来のギターと同じようなテンションで弦を張ってしまうとネックが反ってしまうんです。なので、ちょっと独特のプレースキルが必要になるのですが、これ一台で伴奏からリズムまで同時に1人で演奏できるので、電子楽器ならではのプレイを楽しめるんです」

1988年発売のデジタルギター『DG-10』は、それまで電子鍵盤楽器に内蔵されていたジャズオルガンやトランペットなど様々な楽器の音色やリズムパターンをギター形状のボディに内蔵し、従来のギターではできなかった新しい音楽表現が可能にした。

ユズさん「このデジタルホーンもなんだかかわいいですね。ちっちゃくて。こうした製品を手にしていると、色々なジャンルの楽器にも挑戦してみたい気持ちになってきますね」

井田さん「これはめちゃくちゃ話題になったんですよ。今でもコレクターがいらっしゃって、独自のコミュニティがあるみたいですよ。復活を望む声も届いています」

1988年発売の『DH-100』は、憧れのサックス演奏が簡単にできるデジタルホーン。学校で習うリコーダーの運指で演奏可能で、音程を滑らかに移動させるサックスの奏法もキー操作で行うため、息を吹き込む時の微妙な技術はいらないのが特徴。

デザインするなら好奇心を大切に

ユズさん「俊雄さんご自身は演奏家ではないとおっしゃっていたそうですが、だからこそ誰でも良い音が奏でられるようにという探究心や、音への純粋な好奇心をすごく感じました」

井田さん「そうかもしれませんね。ユズさんも楽器を演奏されますけど、ここの製品に触れてみてどうでしたか?」

ユズさん「どれもおもしろかったですし、『楽器に触れて楽しい』という感覚を久しぶりに思い出した気がします。デザインを作る時もこのぐらい純粋な好奇心を忘れずにいたいです」

好奇心を背景に、自由な発想の下で生み出されたカシオの電子楽器。開発の経緯を知ることが、デザインのヒントをもたらしてくれました。


樫尾俊雄発明記念館

樫尾俊雄のかつての私邸であり、彼が次々と発明し、エレクトロニクス産業の発展に貢献した画期的な製品が展示されたミュージアム。

完全予約制で無料でどなたでもご覧になれます。

〒157-0066 東京都世田谷区成城4丁目19−10

可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する

CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。

これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。

そこで着目したのが、パンチングネット部分です。

プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。

さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。

 

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