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<時> 腕の上で結合する先進テクノロジーとデザイン

樫尾俊雄発明記念館 vol.2

カシオ計算機を創業した樫尾四兄弟の一人で、多くの名作を生み出した発明家・樫尾俊雄。

その功績を今に伝える樫尾俊雄発明記念館に、今年入社2年目のデザイナーがベテランのデザイナーと訪問してきました。
日本の電子産業の発展に寄与してきた名作を前に、感じたこととは。

左:ベテランデザイナー 川島さん 入社以来、時計プロダクト一筋のカシオデザインの“レジェンド”。
中:入社2年目デザイナー ダイチさん 「G-SHOCK」のデザインを担当 右:入社2年目デザイナー ハルさん 「カシオコレクション」「オシアナス」「プロトレック」などのデザインを担当

時計は1秒1秒の足し算。数の技術から生まれた「時の部屋」

東京・成城の地で静謐な時を刻み続ける樫尾俊雄発明記念館。vol.1でご紹介した「数の部屋」の先にある「時の部屋」には、この半世紀の間に生み出された希少な腕時計の数々が展示されています。中でも、1974年に誕生したカシオ初の時計「カシオトロン」が際立った存在感を放っています。

川島さん「『カシオトロン』の開発は私が入社する前なので人づてに聞いた話ですが、やはりはじめて腕時計を製造するのに大変苦労したようです。他社のデザイナーから教えてもらえる範囲で学ばせてもらったり、製造工場に足を運んだりして、見様見真似でスタートしたのだとか」

ハルさん「それでも鏡面仕上げがすごく丁寧ですし、完成度の高さを感じます。2024年の今年にはカシオ腕時計50周年記念として復刻され、瞬く間に完売してしまいましたけど、そうした関心の高さにも頷けます」

川島さん「俊雄さんは『時計は1秒1秒の足し算であり、その意味では計算機と同じである』と考え、それで時計事業に進出したそうなんですね。電卓製造で培った技術を活かし、さらにオートカレンダー機能まで付けてしまった。『0から1を生み出す』という、発明家である俊雄さんらしい信条が詰まった製品だと思います」

1974年に発売されたカシオ初の時計「カシオトロン」は、「完全自動腕時計」という開発思想により、時・分・秒の表示はもちろん、世界初のオートカレンダーを搭載した画期的な時計だった。※動画はカシオトロン50周年記念復刻限定モデル

タッチセンサーにゲームウオッチ……ユニークな時計が続々登場

カシオトロンで一定の存在感を獲得した後は、先進技術を搭載した樹脂製デジタルウオッチが主流に。計算機能や辞書機能、脈拍・血圧計を備えたものなど、ユニークなアイディアが続々登場します。

ハルさん「1983年に発売された『ジェナス リードセンサー』に驚きました。タッチセンサーが付いていて、計算や電話帳機能を使えるなんて……」

川島さん「マジックですよね(笑)。実は私が入社して、最初に手掛けたのがこれの液晶デザインでした」

1983年に発売された『ジェナス リードセンサー』。手書き文字認識機能でガラス部分を指でなぞった数字や文字を記録し、計算まで画面のみでこなす。

ダイチさん「僕が惹かれたのは1995年発売の『サイバークロス JG-200』でした。相手の攻撃を振動で知らせるゲーム機能つきウオッチというコンセプトもおもしろいですし、振動装置と時計を合体させたような大胆なデザインもすごいです」

川島さん「そうですね。この時代はものすごい勢いで新機能が開発されていきました。デザイナーも企画に参画し新しいセンサーやモジュールをどうやって時計の中に入れ込んで、いかに面白い商品になるかに注力していました」

90年代中頃から重要視されはじめた“CMF”とは?

設計にも踏み込み、形をまとめるところからがデザインだった腕時計。ところがG-SHOCKが1983年に誕生してファッションアイコンとみなされるようになってから、大きな変化が訪れます。

川島さん「複雑なモジュールを搭載しやすいよう、1970年代後半以降は樹脂素材を多用しました。そのことを訴求するべく、消費者が最も想像しやすい樹脂素材であるタイヤをイメージして、黒ばかりを採用したんです。それで『ブラックカシオ』なんていわれたりもしました」

ハルさん「確かにカシオの時計は黒のイメージがあります」

川島さん「黒が主流だった80年代から、90年代中頃くらいになって、時計がカジュアルなファッションアイテムとみなされる動きが強まり、多彩なカラーが生み出されるようになったんです」

ダイチさん「たしかにここのショーケースを見ても、その時代から色彩が豊かになっていますね。現在の時計デザインで大切にしているCMF(カラー、素材、仕上げ)も、このころから起こりはじめたのがよく分かります。過去作をヒントに、新規提案をしてみたいです」

ハルさん「いったね? 期待してる(笑)」

受け継いだバトンを繋いでいきたい。「デザイン的チャレンジ」

ハルさん「たくさんの個性的な時計が開発されてきたこと自体は、知っていたんです。しかし、実物を前に大先輩のお話も聞けて、当時の開発背景であったりこれらデザインの必然性といったものをより深く実感できました。一つひとつ点でしかなかったものが、線で結びついたような感覚です。」

ダイチさん「僕もです。僕が担当するG-SHOCKも、時代の変遷を経てこれらデザインにたどり着いたのだという理解を深められました」

川島さん「私が入社したころと比べブランドは大きくなりましたが、『守る』ばかりでは魅力的なデザインは生まれません。『デザイン的なチャレンジとはなにか?』という問いかけを常に忘れず、失敗も糧に、がんばっていってほしいです」

カシオ腕時計デザインの“レジェンド”からバトンを受け取った若手デザイナーの二人。ここ樫尾俊雄発明記念館で受けた刺激をもとに、今後もユニークな時計を生み出してくれるはずです。

 


樫尾俊雄発明記念館

樫尾俊雄のかつての私邸であり、彼が次々と発明し、エレクトロニクス産業の発展に貢献した画期的な製品が展示されたミュージアム。完全予約制で無料でどなたでもご覧になれます。

〒157-0066 東京都世田谷区成城4丁目19−10


可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する

CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。

これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。

そこで着目したのが、パンチングネット部分です。

プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。

さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。

 

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