電卓の新たな価値を考える
文化服装学院とのコラボ電卓インタビュー / 後編
2019年から始まった、ファッションディレクターの山口壮大さんが主宰する文化服装学院の有志による
学生ラボ「CULTURAL LAB.」とのコラボレーションプロジェクト。
“The Choice is YOURS(選択はあなた次第)”というコンセプトのもと、多様性のある価値観の電卓をデザインで表現しました。
デザインを手掛けた当時の学生さんたちとカシオメンバーが今回1年ぶりに再会。
個性豊かな電卓の開発背景を、当時を振り返りながらご紹介します。
ものづくりの大変さを実感
松本 それでは辛かったことや、大変だったことをお聞きしてもいいですか?
モエさん 写真の撮り方を工夫して、日常で電卓を使ってるシーンにしたり、ブツ撮りで周りに可愛いものを並べてみたりして、伝え方を試行錯誤しました。
松本 Instagramを見るたびに、新しいの上がってる!って思いながら楽しみにみてました。アスカさんはどうですか?
アスカさん 私は商品制作の時の最後の決断が毎回きつかったです。これどっちにするか決めないと帰れないよ。って言われながらやってました(笑)でも物作りってそういうことじゃないですか。最終的に1個に決めて作っていかなきゃいけないっていう、その大変さを思い知りました。
松本 授業が終わった後夕方から私たちとのミーティングが始まって、でもあっという間に外は真っ暗になってて。毎回遅くまでやっていましたもんね。
担当した電卓が発売された時の周りの反応は?
松本 製品が発売した時の周りの反応はどうでしたか?
アスカさん 理系の友達は喜んで見てましたね。どこで買えるの?って聞かれたりしました。
モエさん 学校の友達の反応はすごく良かったです。母は私が家でデザインを考えてるのを母が見ていたり、話をしていたのもあって、全部終わった時に、「これが1番可愛い」って陶器のデザインの電卓を買ってくれました。これは年齢層高めの女性に受けるデザインだと思ってたんですけど、”ここにもいたな”って(笑)。
松本 どうでした?荻野さん。
荻野 そうですね、毎回CULTURAL LAB.さんからいただくデザイン画を見るたびに、ちゃんと質感が高く仕上がるかどうか心配でしたね。第4弾テーマ”Wrap”の方は、ここ数年CMFデザイン業界ではトレンドのインクジェットプリンターを使った印刷手法を使って表現すると決まっていたので、斬新なグラフィックをどういう風にプラスチックのケースに落とし込んでいくか、質感の表現ができるのか、結構気を使いましたね。基本インクジェットはフラットな面にしか印刷が載らないのでキーやケースの側面には印刷ができません。なので、ケース樹脂色もグラフィックに合わせてコーディネートしています。シールテーマでは透明インクを複数重ねて厚盛り印刷することでぷっくりしたシールを電卓に貼り付けたような表現をしたり、陶器のテーマでは、実際の陶器づくりで発生する”貫入(かんにゅう)”という焼き上がった陶器を窯から出して、冷ましている過程で生まれるヒビのような模様の表現までこだわりました。
パッケージへのこだわり
松本 パッケージは普段だとマグネットのものってコストがかかるのであまり使わないんですけど、今回は特別に採用したり、フックも普段は透明だけど蛍光色のものをトライしたり、パッケージにも新たな価値を、としてこだわりましたよね。そして第四弾は第三弾までのデザインとガラッと変えましたね。
山口 第一弾〜第三弾は、ハンドバック的にちょっと持ち歩きたいみたいなアイデアもあったりしたので、マグネット式にしました。
松本 二次利用したいっていう声も強かったですよね。
アスカさん 捨ててしまうのではなく小物入れにしたい、みたいな話もありましたよね。
山口 そうですね。なので、製品色に合わせたグラデーションを、シリーズごとに変えて、買った人が受け取ったとき、綺麗だなと喜んでもらえるギフトボックスを目指しました。第四弾は、茶箱とラベルを組み合わせて、インテリア雑貨のようなシンプルでお洒落な印象を持ったデザインを目指しました。店頭で販売する商品だと、商品の写真を大きく表記する必要があったり、棚に吊り下げる必要があったりと、どうしても煩雑なデザインになりがちなんですよね。しかし第四弾は、EC販売限定という特性を活かして、グラフィック表現を自由に捉えることで、商品の全体像よりもそれぞれの柄に注力したデザインを採用することが出来ました。どちらのデザインもこれまでのカシオの電卓のルールでは作れない、新しいパッケージに なったと思います。
一緒にプロジェクトを進めたカシオの印象は?
松本 では改めて、一緒にプロジェクトをやってみてカシオのイメージはいかがでしたか?
モエさん 初台のオフィスに行くことが多かったんですけど、会社に入る時にいらっしゃる警備員の方からすれ違う社員の方まで、皆さんすごく親切な方が多かったです。学生にもいつも優しく迎え入れてくださって。しかも普段会社にいるはずのないすごい変な服でいるのに、「誰なん。」みたいな視線は1回も感じたことがなかった。
アスカさん 打ち合わせさせていただく時とかも、すごい私の意見もちゃんと聞いてくださって、実現しようとしてくれました。
荻野 電卓の開発部の方が結構無理を聞いて、現地の工場に何度も試作をしてもらったみたいで。今回プロダクトに色をつけるために使ったインクジェット印刷って、形状によって色が載る部分と載りにくい部分があって、そのあたりを工場とのやり取りも何度もあったんですけど、開発部がかなり頑張ってくれたみたい。陰ながらすごく応援してくれていました。
松本 すごく熱い方で、たくさん動いてくれましたよね。
アスカさん 印象が変わった点で言うと、なんかそういうところかもしれないです。ものづくりをされている方たちの熱さというか、どうにか思考を変えて実現するために考えてくださるのを見て、胸が熱かったですね。カシオは大手電子機器メーカーで、堅いイメージがありましたが、私たちが情緒のある物を作ろうとしていたこともあり、親身に聞いてくださり、一緒に試行錯誤してくださったことに感動しました。学生の一言にもたくさん動いてくださって、今考えるとすごいことだったと思います。大人の熱さを感じました。
CULTURAL LAB.のみなさん、ありがとうございました。
学生と共に新しい電卓のデザインを考えた時間は、私たちにとっても多くの刺激をいただくものでした。
私たちはこれからも幅広い分野との融合により、新たな価値を生み出せるよう日々業務に取り組んでいきます。
可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する
CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。
これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。
そこで着目したのが、パンチングネット部分です。
プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。
さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。