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電卓の新たな価値を考える

文化服装学院とのコラボ電卓インタビュー / 前編

2019年から始まった、ファッションディレクターの山口壮大さんが主宰する文化服装学院の有志による
学生ラボ「CULTURAL LAB.」とのコラボレーションプロジェクト。

“The Choice is YOURS(選択はあなた次第)”というコンセプトのもと、多様性のある価値観の電卓をデザインで表現しました。
デザインを手掛けた当時の学生さんたちとカシオメンバーが今回1年ぶりに再会。
個性豊かな電卓の開発背景を、当時を振り返りながらご紹介します。

第1弾から第4弾まで、それぞれテーマを設定し
“Be Bold(大胆であれ)”、”Be Freed(解き放たれろ)”、”Be Complex(複雑であれ)”、”Wrap (包む/纏う/夢中になる)”という
4つのテーマでデザインされた合計21種類の電卓が販売され、好評を博しました。

学生のみなさんが考案したデザインの電卓(一部抜粋)

コンセプト電卓の企画を受け

松本 お久しぶりです!本日はよろしくお願いします。

みなさん よろしくお願いします。

松本 5年も前になりますが2019年、カシオは機能的な電卓ではなく感性に訴える電卓を作りたいという企画を立ち上げました。仕事や勉強向けというよりも個々のスタイルや感性を表現したかったので、私たちは普段とは違う刺激を求めて社外とのコラボを考えました。そこで以前から別のプロジェクトでご一緒している、ファッション業界で活躍されているヤマグチさんに話を持ち掛けました。業界が異なるのでどう思われるか不安でしたが、反応は良かった記憶があります…実際のところ、話を聞いた時はどういう印象を持たれましたか?

ヤマグチさん 当時はCULTURAL LAB.を結成して学生と何かを作りたいと思ってた時でしたね。普段の仕事は課題解決が中心ですが、このプロジェクトはゴールが固まってなかったので新鮮に感じた記憶があります。機能重視の電卓に装飾性や情緒を注入するって、どんな化学反応が起こるのか想像つかなくて、それがすごく面白かったです。ファッションと遠い電卓だからこそ、面白い変化があると思いました。好奇心を刺激されましたね。

松本 このプロジェクトのことを学生に話した時、反応はいかがでしたか?

ヤマグチさん 「で、電卓ですか?」みたいな。「ファッションじゃないんですか、洋服じゃないんですか?」とか、そういう感じで(笑) 衝撃としてはもちろんあったと思います。

アスカさん 電卓の可能性をその時点では見出してないので、どうなるかわかんなくて(笑)。後々ミーティングを重ねて、開かれていく道なんですけど電卓で何ができるんだろうとは思ってました。

theme

人生に影響を与えた経験

松本 全部で第4弾までありましたが、それぞれにテーマを一緒に作り、PRについて宣伝部と一緒にコピーやプロモーションを考えて進めましたが、この時の作り方とか頭の中ってどういう感じでしたか?

アスカさん 結構私、これ、人生に影響を与えていて。まず自分が英語を喋れるということもあり、その英語の感じと日本語の感じで、言葉を使って何かを伝える経験をここで初めてしました。そして、自分の視点や世代的な概念から言葉を選んで伝えるのが初めての経験だったので、とても面白いと感じました。今の仕事でも、結構そういうことを任されるんですよね、今に繋がる人生の第1歩でした。

松本 なんかすごくいい経験に繋がったんですね!ナンバースラングというアイデアをラボさんからいただいて、社内で「なんだろか?」みたいな話になりましたが、若者や海外で流行っていると聞いて、ラボさんならではのアイデアだったので採用したい、と思いナンバースラングのいろんな組み合わせを考えましたよね。でも社内から、この国でこの数字を使うのはタブーとかの指摘が入ったりして(笑)。

アスカさん それが1番大変だった(笑)。ウェブサイトで探し回って良いのが見つかった時、これだ!ってなったのを覚えています。

中の構造やケーブルが見えるスケルトンモデル

社会人との打ち合わせ

松本 この取材に向けて、こんなこともやったなっていうのを、私も改めて資料を振り返って見直したりしていました。 デザイン会議っていうデザインのメンバーだけじゃなくて、営業や開発などの他の部署との打ち合わせの印象はいかがでしたか?

アスカさん めっちゃ緊張してました、私は。お世話になっております、ですら言い慣れてないみたいな状態で、会社怖いな、みんな大人だって思いながら、自分大丈夫かなって思ったのを覚えてます。なんかもう自分で毎回毎回言いたい放題してるのわかってて、大丈夫かなって。こんなに言って。とか思いながら。

松本 なるほど、モエさんはどうでした?

モエさん このデザインに込めた思いとか、こういうことを伝えたくてこのデザインを作りましたって伝えるのもそうなんですけど、そこにプラスでこの電卓としての機能を考えないといけない、カシオの人はそこを本当にしっかりと考えられているっていう印象がありました。

アスカさん そこの両立がすごいよね。

松本 液晶のネガ表示での視認性を気にしてラボさんに確認しましたよね。クリアモデルではお客さまには決して見せない、表示のカバーパネルを貼り付けるテープや基板、ケーブル、ケース内の成形品のリブが見えてしまうことを私たちは気にしていたんですが…。

アスカさん 全然それで良いんです!それがカワイイんです! 当時基板アクセサリーが流行っていたりして、中を見せたかったんです。

中の構造やケーブルが見えるスケルトンモデル

<グラフィックイメージの共有>

楽しみながら成長できた機会

松本 このプロジェクトに参加して、よかった点を教えてください。

モエさん よかったのは、ただ好きなデザインをやればいいっていうだけじゃなくて、電卓として使いやすく、しかも可愛いって気持ちを持って使ってもらうためにはどうしたらいいか考えていく中で、すっごい細かいグラフィックとかをやりたい、ってなった時に、荻野さんとどうしていこうって、たくさん話し合いをしたのが結構楽しかったです。私すごい難しいことをいっぱいお願いしてたんですけど、どうにか実現させようとしてくださって。

<グラフィックイメージの共有>

松本 ラボさんの方でデザインを考えるということもしていただきましたが、モエさんはこの時までイラストレーターを使ったことがなかったんですよね?

モエさん そうです。この電卓ををやらせていただくってなってから使い始めて、電卓のデザインやプロモーション用にインスタの画像を作っていきました。すごくいいきっかけをいただきました。

ヤマグチさん アスカさんに教えてもらったんでしょ?

モエさん そうです。ここで移動するんだよとか、こういう風にやったらやりやすいよとか、1番最初の使い方はアスカさんにオンラインで教えてもらいました。

アスカさん 懐かしい(笑)。

荻野 どのモデルでもそうでしたが、どのグラフィックをどこにどうイラストレーターでエフェクトをかけて使うか、モエさんも考えてくれましたよね。僕たちも電卓を操作する上での視認性をキープするため、電卓のCaseやKeyの印刷文字とグラフィックが被らないように細かくチクチク試行錯誤しましたね。サビのテーマでは、サビが発生する原理は鉄板の塗装が剥がれ、そこから酸化して、塗装皮膜が浮いてきて、風雨にさらされて、サビのシミが下に垂れ下がってくるから…などと想像しながら、どこからサビが発生するのが自然だろうか?とイメージしながらサビのグラフィックにこだわってレイアウトしていきました。

松本 アスカさんにとっての、楽しかった思い出を教えてもらってもいいですか?

アスカさん さっきの話の続きになるんですけど、言葉が決まってから、どのように表現していくかを決めていた記憶があります。1番最初は『Be Bold』でパキっとした蛍光色、2番目は『Be Freed』で自分をさらけ出す意味でスケルトンデザインにしました。3番目は『Be Complex』なのでマーブル模様にしようと決めました。このように、言葉からモノを作っていくっていうプロセスがすごく楽しかったです。あと、毎回のミーティングで私がやりたいことをありとあらゆる色々な思考を働かせて実現してもらったことにすごく感動して、楽しかったのを覚えています。

<グラフィックイメージの共有>

可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する

CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。

これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。

そこで着目したのが、パンチングネット部分です。

プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。

さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。

 

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