共創から生まれた
新たなピアノの在り方「mobile Privia」
日々、私たちが生み出しているデザインを、
開発の流れを交えて担当デザイナー本人の視点から語ります。
私たちは量産製品のデザインだけでなく、デザインの研究開発も行なっています。
今回はVISION WORKS「mobile* Privia(モービレ プリヴィア)」のデザイン開発ストーリーをご紹介します。
*mobileには、イタリア語で「家具」という意味があります
ライフスタイルとの調和にこだわった
ピアノのデザイン研究
カシオの楽器では、現代のライフスタイルや人々の日々の暮らしと調和することを大事にしながら、商品や世界観をデザインしています。
今回ご紹介するのは、「これからのライフスタイルと調和するピアノ」をテーマとしたデザイン研究の成果です。
私たちが大事にしたことは、生活空間と調和することはもちろん、使われ方や作られ方も含めて、ピアノが心地のよいものとして暮らしの中に存在することでした。
これからの世界でどのようなピアノであれば音楽が身近にある暮らしを叶えてくれるのか、インテリアの世界にヒントを求め、外部のインテリアデザイナーや家具職人と共に考えてみることにしました。
持続可能なライフスタイルとの調和が
心地よさを生み出す
導き出したコンセプトは、"Timeless Harmony"。
個人のライフスタイルはもちろん、これからの社会に求められる持続可能なライフスタイルとも調和していくことを目指したコンセプトです。
そこから考え出したのは、ユーザー自身が容易に形を組み替えることができるユニットシステムです。個々のニーズに合わせてテーブルの位置や脚の形をカスタマイズできることに加え、どこかが痛んでも部分的に交換修理することができる為、より長く使い続けることができます。また、使用する材料も天然の木材や再生材などの再生可能な循環型資源の使用を想定しています。
これらにより、個人個人のライフスタイルとの調和と環境負荷を軽減した持続可能なライフスタイルの調和を両立できるのではないかと考えました。
共創により生み出された
新たなピアノの可能性
フラグシップモデルであるPX-S7000の世界観は、今までのピアノが持つイメージとは異なります。
「ピアノは壁際に置かれている、重くて黒くて大きい楽器」という伝統的な従来のピアノのイメージから脱却するには、思い切った刷新が必要でした。 「昔ピアノを弾いていたけれど、いろいろな理由でピアノから離れてしまった」という大人に、もう一度ピアノを弾く楽しみを味わい、音のある生活を感じてもらいたい。
そんな思いから生まれたPX-S7000の魅力を、ユーザーまで最大限に伝えるための世界観を考えました。
"Timeless Harmony"というコンセプトから生み出されたのは、インテリア性の高い、家具のような魅力的な佇まいです。
モダニズム建築を彷彿とさせる、水平垂直を基調としたシンプルながらも特徴ある構成は、様々な生活空間に合うようデザインされています。
細部までこだわって作り上げられた上質な家具のようなスタイリングは、生活空間の中でのピアノの存在をより心地良いものにし、天然木/ガラス/スチールなど、経年変化する家具同様の素材使いによって、使えば使うほど味が増し、使う人それぞれの暮らしと馴染んでいくようになっています。
一般的なピアノとは一線を画すような、ライフスタイルと調和する新たなピアノの可能性を感じられる佇まいになりました。
余白が生み出す
暮らしと溶け合う音楽体験
私たちが目指したのは、インテリア性が高いスタイリングを生み出すことだけでなく、ピアノが「演奏のためにわざわざ出向く場」から、「生活の中に自然と存在する音楽を楽しむ場」に変わるような体験を生み出し、ピアノをもっと暮らしと調和させることでした。
その象徴となっているのが、一番の特徴でもある、ピアノと一体化した丸いサイドテーブルです。ピアノという"物"を、弾く人だけでなく、弾かない人も集う"場”にすることで、家族や身近な人と一緒に音楽を楽しむ時間を作り出せるのではないかという発想から生まれたデザインです。
家具デザインに見られる遊び心のような、あえて無駄とも思える余白を作ることで、暮らしと音楽を繋ぐ心地よい体験を形にできました。
インテリアデザイナー×家具工房×カシオの三者コラボレーション
このデザインは、インテリアデザイナーであるHITOSHI MAKINO Designの牧野仁さんと家具工房gauzy calm worksさんとの共創があったからこそ生み出すことができました。
牧野さんは、家具デザインの本場ミラノで、巨匠ピエロリッソーニ氏に師事した経験もあるインテリアデザイナー。国内外の空間デザイン、インテリア、家具、照明など、様々なデザインプロジェクトに携わりご活躍されています。
gauzy calm worksさんは、日本の2大家具産地の1つである旭川にあるオーダーメイドファニチャーブランドで、技能五輪で日本一も取ったことのある職人さんが複数名在籍。確かな技術に加え、新鮮な感性とエネルギーで高品質な家具を製作されています。
その両者と楽器デザインのノウハウを持つカシオのデザイナーが一体となって今回のデザインを完成させました。
外部のインテリアデザイナーや家具工房と一緒にデザインするのは私たちも初めての取り組みでした。
カシオのデザイナーが中心になって考えたコンセプトに、インテリアデザイナーの牧野さんが形を与え、家具職人のgauzy calm worksさんが具現化していくという流れでプロジェクトは進みました。
ライフスタイルに調和するデザインとはどんなものか、繰り返し議論しながらデザインを検討し、ミニチュアモデルで構造バランスを確認した後、実寸大の1stプロトタイプを作成。そして、旭川の工房にも訪問させてもらい、職人さんに張り付いて一緒に細かい部分までデザインを仕上げていき、最終プロトタイプを完成させました。
こうして、ピアノがこれから先の人々の暮らしと調和している未来を感じさせる、細部まで美しい家具のような佇まいに仕上げることができました。
インテリアデザインの知見を取り入れ、家具職人の技術によって形にできた今回のデザイン。
新たなプロセスや技術を組み合わせることで新たな価値を生み出せることを実感した、
非常に刺激的で実りのあるプロジェクトでした。
今回見えてきたピアノの新たな可能性をお客様に届けられるよう
これからの楽器デザインに活かしていきたいです。
いつか皆様にもご覧いただけるような機会を作れたらと思います。
HITOSHI MAKINO Design Co.,Ltd. | https://www.hitoshimakino.com/
gauzy calm works | https://gauzycalm.com/
可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する
CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。
これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。
そこで着目したのが、パンチングネット部分です。
プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。
さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。