大学との共創で新鮮な発想を取り入れる
OPEN INNOVATIONへの取り組み
「産学協同研究」
CASIO DESIGNでは外部の新鮮な発想を取り入れるべく
OPEN INNOVATIONという視点でのさまざまな活動を行なっています。
今回は特にデザインを学ぶ学生との共創の歩みについてご紹介します。
今回はデザイナーの視点から
カシオ内のユニークでサステナブルな取り組みをご紹介します。
背景と目的
カシオデザインでは、10年ほど前から、産学協同研究というスタンスで、国内外のデザイン系教育機関をパートナーとした共創プロジェクトを推進してきました。この取り組みの目的は大きく2つ。
1つ目は デザイナーを目指す学生の皆さんにインハウスデザインの仕事を深く知っていただくことで、卒業後の(将来の)進路の一つとしてのイメージを明確にしてもらうこと。
2つ目は カシオ側が若い世代の柔軟で新鮮な考え方やカルチャーを吸収すること。
これらの目的を基本に、カシオから実際のデザインプロセスに即したテーマ課題を提供し、学生視点での思考によるアイデア展開をプロのデザイナーがサポートし進めるユニークな試みです。
海外の教育機関との共創
2012年、中国の浙江大学を皮切りに、アジア地域のデザイン系学部を持つ大学との産学協同研究をスタートしました。
2014年からは4年間、インドネシアの国立バンドン工科大学 プロダクトデザイン専攻の学生と千葉大学工学部デザイン学科の学生とのコラボレーションで、現地のリサーチを中心にインドネシアの若者向けの機器のデザイン開発を継続的に実施。
文化背景の違いの理解も含め、現地でのワークショップを重ねながらユニークな商品の企画アイデアをまとめつつプロダクトデザインにまで落とし込んで行きました。
2018年にはタイのアサンプション大学と同様のジョイントプロジェクトを実施し、同じアジアでありながらもお国柄を色濃く反映したデザイン開発に新鮮な発見がありました。いずれも、現地の学生の皆さんにとっては日本の企業によるデザイン開発プロセスの実態を学ぶ貴重な機会になったのと同時に、我々にとっては日本とは全く違う若者の行動やトレンド把握など、目から鱗が落ちるプロジェクトとなりました。
指導メンバーは千葉大の学生メンバーと共に直接現地を訪問し、生活に触れながらリサーチやワークショップを重ねました。数回の現地開催によって実際の文化を肌で感じる良い機会にもなり、民族的背景の理解や独特の嗜好の把握などマーケティングの面でも良い実践になったと思います。日本のサブカルチャーに興味がある学生が多い中、日本で実施された最終プレゼンにはメンバー全員が来日し、初めて触れる日本文化に大いに刺激を得て帰りました。
フラグシップモデルであるPX-S7000の世界観は、今までのピアノが持つイメージとは異なります。
「ピアノは壁際に置かれている、重くて黒くて大きい楽器」という伝統的な従来のピアノのイメージから脱却するには、思い切った刷新が必要でした。 「昔ピアノを弾いていたけれど、いろいろな理由でピアノから離れてしまった」という大人に、もう一度ピアノを弾く楽しみを味わい、音のある生活を感じてもらいたい。
そんな思いから生まれたPX-S7000の魅力を、ユーザーまで最大限に伝えるための世界観を考えました。
国内の教育機関との共創
海外の教育機関との共創が、文化的背景の違いを踏まえた市場トレンドの把握が主な成果であったのに対し、国内の教育機関との共創は、若者のリアルな嗜好や肌感を深く掘り下げることができる機会と捉えて進めています。
これまでも武蔵美、多摩美をはじめとする主要な美術系大学ともさまざまな視点で継続的に共創を進めてきています。
国内共創の最新の実施状況
2021年、山形県にある東北芸術工科大学デザイン学科との産学共同プロジェクトを実施しました。現役デザイナーが直接アドバイスを行い正規の授業を受け持つ「産学連携授業」というスタイルでプログラムを設計し推進しました。
プロダクトデザイン・グラフィックデザインそれぞれの分野を志す2年生を対象に、身近な製品の開発やプロモーションを想定したインハウスデザインのプロセスをなぞる形で提供して行きました。コロナ禍で変化する状況の中、リアルコミュニケーション補完を軸に、対面とオンラインを併用しながらのプログラムになりましたので、最新事例としてご紹介します。
我々の培ってきたノウハウをできる限り提供しつつ、特に対面のコミュニケーションで直接指導・アドバイスする機会を多く設け、制約の多い状況ながら実際のデザインワークのプロセス体験を可能な限り提供することを目指して授業を進めました。
プロダクトデザインの授業では、実際のデザインスケッチのプロセスを若手デザイナーが実演しながら指導し、グラフィックデザインの授業では、グループワークによるアイディエーションの実践授業を行いました。いずれの授業でもメンバー間の突っ込んだディスカッションによるアイデア展開の楽しさを体感してもらうことができました。
その後の個人ワークでも、オンライン/オフラインでカシオメンバーとミーティングを重ね、学生自身もさらに納得性を深めて行きます。このプロセスは学生にとって、とても刺激的な経験だったようです。
大学側の先生方からは、普段の授業では教えることのできない実践的なデザインプロセスの提供や、授業時間外も親身になって学生に寄り添って指導してくれたことへの感謝や、コロナ禍でリアルの授業や演習が激減している中、とても貴重なコミュニケーション体験をさせることができ、学生にとっても新鮮で濃い3ヶ月だったとのご評価をいただきました。
東北芸術工科大学のホームページはこちらから
対応にあたったデザイナーも、普段なかなか体験することのない指導・ファシリテーションの機会に多く触れることで、自身の成長につながる経験になったという実感を持っています。
自身が持つスキルを提供しているつもりが、学生の皆さんの真っ直ぐな取り組み姿勢や新鮮な発想など、知らず知らずのうちに自らの振り返りの機会にもなっていたようです。
デザイナーにとって必要な海外の文化や嗜好、国内外の若者層のトレンド情報などは、現代社会ではインターネットなどで当たり前に得ることができますが、デザイナー自身が直接触れることで感じる「肌感覚」での気づきや発見はそれでは得られない、変え難い価値です。長期にわたる継続的な学生との共創は、視野を広げる良い機会になっています。
CASIO DESIGNとしては、常に多くのプロジェクトを担当しているデザイナー含め、提供する側される側共に大きなメリットのある活動と認識しています。
まだまだ先が見通せない状況ですが、国内、海外問わず今後も様々な共創先を模索しながら継続的に実施してゆく予定です。
可視化された音の流れが、
プレイヤーの感性を刺激する
CASIO独自のHorizontal Bass-Reflex System(*1)によって実現した、高音質でありながらコンパクトなボディという
「CT-S1000V」の特徴。
これをデザインで表現するという課題もまた、難関のひとつでした。
そこで着目したのが、パンチングネット部分です。
プレイヤーが調整しながら生み出した音源が、アンプからスピーカーに送られ、音として流れる動きを、造形によって視覚的に再現。
さらに所有欲を刺激するため、パンチングネット越しに配置された大胆なCasiotoneのロゴや、緻密な立体造形にもこだわり、デザインが完成しました。