第0回 プロローグ~私がXWに惚れた訳

皆様こんにちは。このコラムを担当させていただく氏家克典と申します。
皆様にシンセサイザーの楽しさやクリエイティビティを拡めるべく、日々ライブやセミナーなので布教(!)活動をしております。
私が初めてシンセサイザーに触れたのは1978年ごろで、普段ピアノやオルガンでバンド活動をしていた際にひょんなきっかけでシンセサイザーを使うこととなり、当時の渋谷にある某有名楽器店で国産メーカーのモノフォニックシンセサイザーの講習を受けたのが最初でした。全くロジックを理解していない状況でつまみだらけのパネルを見て呆然としていましたが、ただその時の講師の方がテクニカルよりも音楽的方向性で講習してくれてグイグイとシンセサイザーの魅力に引き込まれました。
大きなポイントは、シンセサイザーには決まった音が無いということ。すなわち自分だけのサウンド、楽器自体を作れる自由を手に入れることができるということです。まさにこれがシンセサイザーという楽器のアイデンティティそのものなのです。
シンセサイザーはその後、様々なテクノロジーと心臓部である電子回路の劇的な向上により、世の中にある楽器音の再現はもちろん、現実には存在しない楽器の範疇までも守備範囲とし、さらにそれらのサウンドを駆使してあらゆるジャンルの音楽をも制作できるツールとして進化しました。これらのシンセサイザーはワークステーション型シンセサイザーと呼称されますが、音楽制作用ツールとしての意味合いが前面に出過ぎていて、私的には本来のシンセサイザーのあるべき姿であるサウンドのクリエイティビティがおろそかになっているように感じていました。

そこに現れたのがカシオのXWシリーズです。
カシオと言えばG-SHOCK、デジカメ、電子辞書、楽器では電子ピアノというイメージが強いですが、80年代にはCZシリーズなど先進的なシンセサイザーを登場させ、私もワクワクしながら愛用していました。WinterNAMM2012でのXWシリーズ発表は、シンセサイザー業界にはエポックメイキングな出来事でした。

「あのカシオが本格的シンセサイザーを復活?!」という噂が全世界を飛び交い、その噂通りのスペックと革新性を備えたXWが登場したのです。
もちろん日本国内でのXW発表会には私も駆けつけ、実機に初めて触れることが出来ましたが、そのCZのDNAをしっかり受け継いだ抜群のサウンド・クオリティ、ステップシーケンサーによる先進の音楽性、ループサンプリングによる革新性は、他の国内楽器メーカーにはなかったカシオならではの現在あるべきシンセサイザーとしての解答が詰まっていました。もう一瞬で惚れ込みましたね。それ以降XWシリーズにどっぷりハマったのは言うまでもありません。

学生時代よりEAST&WESTや 世界歌謡祭など数々のコンテストに出場するかたわら、作編曲、自己のグループ、スタジオミュージシャンなど本格的プロ活動をスタート。音楽コンサルティング、音楽ソフトウエア企画制作、音楽学校運営、作編曲、プロデュース、国内/海外デモンストレーション、研修、後進育成、連載執筆など、その活動は多岐に渡っている。特にデジタル楽器関連の分野では、その軽妙で豊かな経験に基く語り口と独自の視点によるハイクオリティで斬新なプロデュース作品が、常に業界の注目を浴びている。
また、いままで手掛けたTVCM音楽/楽器内蔵デモ曲は数百曲、デモ演奏/研修で訪れた国々は15ヶ国以上に及ぶ。
一般社団法人日本シンセサイザー・プログラマー協会(JSPA)理事